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2017年11月3日2:48(約2360日前)

成年後見制度の保護者は誰が選ぶの?法定後見制度と任意後見制度の違い

相続・成年後見

成年後見制度って?

成年後見制度は、老衰や病気、事故など何らかの原因により、精神上の障がいによって事理弁識能力を欠く状況に至ってしまい、家庭裁判所の審判を受けた人を保護するための制度です。
保護する側を成年後見人保護される側を成年被後見人と呼びます。 保護する側は主に財産管理と身上監護を主眼として本人を代理して法律行為を行うことになります。なお、単純に割り切ることが難しいケースもありますが、法律上の定義では法律行為とある通り、成年被後見人の身の回りの世話をする介護などの事実行為(実際に介護士のように介護を行う行為)や医療行為などへの同意はこれに含まれていません
そのため療養看護に関して成年後見人は成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない身上配慮義務を負いますが、身上保護するための法律行為に義務を負うのであって事実行為としての義務はありません。
成年後見制度は法定後見制度と任意後見制度に大別されます。

家庭裁判所が保護者を選ぶ法定後見制度

法定後見制度は、実際に認知症が発症するなどして、本人の判断能力が低下してから本人やご家族などの申立てによって家庭裁判所が保護者を選任し、その権限を法律の規定と審判によって決定する制度です。
これは法律の規定による後見制度で、後見(判断能力が欠けている)、補佐(判断能力が不十分であることが明白)、補助(判断能力が不十分であるが、明白とはいえない)の3つの制度があります。補佐と補助は本人の申立てまたは本人の同意を要件としているため、制度開始時期(保護を開始する時期)は本人の意思が尊重されます。
なお、法定後見制度の書類提出先は裁判所であるため、行政書士は法定後見制度の書類を作成できません。代理の場合は弁護士や司法書士、あるいは本人もしくはその他の申立権者が申請することになります。

自分で保護者を選ぶ任意後見制度

任意後見制度は、本人が契約締結に必要な判断能力を有している間に、将来、自分の判断能力が低下した場合にそなえて、自分の任意後見人(代理人)となる人を選んで、その任意後見人にどのような権限を与えるかを契約(公正証書による契約)によって定める制度です。
本人の判断能力が不十分になったとき、その契約の効力を発生させて保護者(成年後見人)が本人(成年被後見人)を保護することになります。
任意後見制度は法律ではなく契約によって成年後見人とその権限の範囲を本人が定めることを考慮した制度です。本人の自己決定権を尊重した制度といえます。
任意後見制度でも家庭裁判所は任意後見契約の効力を発生させるために任意後見監督人の選任と、任意後見が適正に行われるための支援をします。
任意後見契約は以下の3種類があります。

将来型

親族などが保護者(受任者)の場合に利用されることが多く、本人(委任者)の判断能力が不十分になったタイミングで任意後見契約を発効させます。

移行型

行政書士など士業が保護者(受任者)の場合に利用されることが多く、本人(委任者)に判断能力があって任意後見契約を発効させない間は財産管理等委任契約や見守り契約で代理権を付与し、判断能力が落ちたタイミングで自動的に任意後見契約にスライドさせます。

即効型

すてに判断能力が不十分になりつつある場合など任意後見契約をすぐに発効させたい場合に利用されることが多く、任意後見契約後すぐに任意後見監督人選任の申立てをして任意後見契約を発効させる目的で締結されます。

行政書士はこの任意後見制度における契約書の作成を業務としていますので、行政書士に依頼する場合はこの任意後見制度の場合に限られます。

まとめ

障がい者と健常者がお互いに区別されることなく平等に社会生活を共にすること、本人(成年被後見人)の自己決定の意思が尊重されること、何でも人に任せるのではなく、本人がそのとき有している能力を最大限に活かして生活することを尊重すること、本人の気持ちを最大限に考慮することが成年後見制度の基本理念です。
法律論だけではなく、人権擁護の考え方を意識することが成年後見制度においては重要です。

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