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2017年12月6日21:54(約684日前)

財産管理を安心して他人に任せるために。財産管理等委任契約

相続・成年後見

財産管理等委任契約について

財産管理等委任契約は、自己の財産を管理するための代理権を他人に与えるための契約です。
任意後見契約とは反対に、代理権を委託する本人(委任者)の判断能力が低下していない場合でも契約を発効させることができます。
そのため代理権を委託する本人(委任者)に判断能力がある間は財産管理等委任契約で代理権を付与しておいて、判断能力が落ちた場合に自動的に任意後見契約にスライドさせる移行型の任意後見契約を締結するために任意後見契約と同時に財産管理等委任契約を締結することがあります。
また精神上の障がいではなく身体上の障がいがある場合に財産管理等委任契約を利用することもできます。
もちろん代理権を付与したからといって本人(委任者)の法律行為が制限されることもありません。

財産管理等委任契約の注意点

この契約の注意点は、家庭裁判所などの公的機関が代理権を委託された者(受任者)を監督するなどの義務がない点です。
また任意後見契約書と違って必ずしも公正証書として作成する必要がないため、当事者同士で契約書を交わすのみの契約を締結することも可能です。
しかし公正証書として締結しておけば、受任者が本人(委任者)の代理で銀行でお金のやり取りをする場合にも毎回委任状を見せなければならないなどの手間をなくす(※銀行によっては毎回委任状が必要な場合あり)ことが可能になりますし、何より監督人が受任者の監督をするようにしておくことが、事務処理における万が一の不正が起きるリスクを低減することに寄与します。
そのため監督人を選任して代理権を委託する本人(委任者)と代理権を委託される者(受任者)とこの契約を監督する役目を担う監督人の三者で公正証書として契約することが望ましいです。

財産管理等委任契約書のひな形を解説

公証役場へ行くと財産管理等委任契約書のひな形をもらうことができます。今回はこのひな形をベースに契約書の内容を解説します。
親族に後見を依頼する場合で、無報酬、自動的に任意後見契約へシフトする移行型の契約を想定しています。
実際に契約書を作成する場合はひな形の丸写しではなく、必ず行政書士などの専門家に契約内容と契約書の相談をするようにしてください。

平成○○年第○○○号

財産管理等委任契約書公正証書

本公証人は、平成○○年○○月○○日、委任者○○(以下「甲」という。)及び受任者○○(以下「乙」という。)の嘱託により、次の法律行為に関する陳述の趣旨を録取してこの証書を作成する。

(契約の趣旨)

第1条

甲は乙に対し、平成○○年○○月○○日、甲の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務(以下「委任事務」という。)を委任し、乙は、これを受任する。

(任意後見契約との関係)

第2条

  1. 本契約締結後、甲が任意後見契約に関する法律第4条第1項所定の要件に該当する状況になり、乙が任意後見契約による後見事務を行うことを相当と認めたときは、乙は、家庭裁判所に対し任意後見監督人の選任を申立てをしなければならない。
  2. 本契約は、任意後見契約につき任意後見監督人が選任され、同契約が効力を生じたときに終了する。
ここに財産管理等委任契約から任意後見契約へのシフトのタイミングを明記します。
「任意後見契約に関する法律第4条第1項所定の要件に該当する状況」とは判断能力が低下した状況を指します。

(管理対象財産)

第3条

乙が本件委任事務により管理する財産は、動産、不動産を含む甲の所有する全ての財産とする。但し、財産管理着手時において、これと異なる変動があったときは、財産管理着手時における全ての財産の管理を含む。

(委任事務及び代理権付与の範囲)

第4条

甲は、乙に対し、別紙代理権目録記載の委任事務を委任し、その事務処理のための代理権を付与する。また、甲が医療行為を受けることの同意の権限を乙に付与する。

委任契約の範囲を包括的に定めた代理権目録を別紙で作成します。

(証書等の引渡し)

第5条

  1. 甲は、乙に対し、本件委任事務処理のために必要と認める次の証書等を引き渡す。
    (1)登記済権利証
    (2)実印、銀行印
    (3)印鑑登録カード
    (4)預貯金通帳
    (5)年金関係書類
    (6)各種キャッシュカード
    (7)有価証券
    (8)建物賃貸契約書等の重要な契約書類
  2. 乙は、前項の証書等の引渡しを受けたときは、甲に対し、預り証を交付してこれを保管し、右証書等を本件委任事務処理のために使用することができる。

(報告義務)

第6条

  1. 乙は、甲に対し、面談又はその他適切な方法で本件委任事務処理の報告をしなければならない。
  2. 甲はいつでも乙に対し、本件委任事務処理状況につき報告を求めることができる。
  3. 本契約が終了した場合、乙は、甲に対し、遅滞なく精算事務に関する報告をしなければならない。

(費用の負担)

第7条

乙が本件委任事務を処理するために必要な費用は、甲の負担とし、乙は、その管理する甲の財産からこれを支出することができる。

(報酬)

第8条

乙の報酬は無報酬とする。

親族間の後見では無報酬とすることが多いですが、行政書士等の専門家に後見を依頼する場合は報酬が発生します。
行政書士の場合は月額2万8千円程度が相場と言われていますが、この報酬額は報酬の上限であり、通常は何か依頼をした範囲で依頼内容に応じて実費プラス報酬が発生し、特に何もお願いしない月は報酬が発生しません。
ただし内訳は受任者の取り決めによりますので、報酬が発生する契約の場合はこの部分はしっかり確認しておきましょう。

(契約の変更)

第9条

本契約に定める代理権の範囲を変更する契約は、公正証書によってするものとする。

(契約の解除)

第10条

甲及び乙は、いつでも公証人の認証を受けた書面により本契約を解除することができる。

(契約の終了)

第11条

本契約は、第2条第2項の場合の他、次の場合に終了する。

  1. 甲又は乙が死亡し、又は破産手続開始決定を受けたとき
  2. 乙が後見開始の審判を受けたとき

(終了時の財産引継ぎ)

第12条

乙は、本件契約が終了した場合、本件委任事務にかかる管理財産、帳簿類及び証書類を甲または甲の法定代理人または遺言執行者に引き渡すものとする。

(守秘義務)

第13条

乙は、本件契約に関して知り得た甲の秘密を正当な理由なくして第三者に漏らしてはならない。

本旨外要件

(本籍)東京都○○区○○町○丁目○番地
(住所)東京都○○区○○町○丁目○番○号
    無職
    委任者甲 ○○ ○○
         大正○年○月○日
甲は、印鑑登録証明書の提出により人違いでないことを証明させた。 (住所)東京都○○区○○町○丁目○番○号
    会社員
    受任者乙 ○○ ○○     印
         昭和○年○月○日
乙は、印鑑登録証明書の提出により人違いでないことを証明させた。

前記のとおり、委任者甲、受任者乙に読み聞かせ、かつ閲覧させたところ、各自この筆記の正確なことを承認し、署名押印する。

 委任者甲 ○○ ○○
 受任者乙 ○○ ○○
この証書は、平成○○年○○月○日、本公証人役場において、法律の規定に従って作成し、本公証人次に署名押印する。

 東京都○○区○○町○丁目○番○号  東京法務局所属  公証人 ○○ ○○

代理権目録(委任契約)

  1. 動産、不動産等甲の所有する全ての財産の管理、保存及び処分に関する事項(不動産の保存に関する事項を除く)
  2. 金融機関、郵便局、証券会社との全ての取引(貸し金庫取引を含む)に関する事項
  3. 各種保険契約(類似の共済契約を含む)の締結、変更、解除、保険料の支払い、保険金の受領等保険契約に関する事項
  4. 定期的な収入の受領及びこれに関する諸手続
  5. 定期的な支出を要する費用の支払い及びこれに関する諸手続
  6. 日常生活に必要な生活費の管理及び物品の購入その他の日常関連取引(契約の締結、変更、解除を含む)に関する事項
  7. 葬儀、埋葬、納骨、永代供養、年忌法要等祭祀に関する菩提寺との交渉・調整及びこれに関する費用の支払い等
  8. 登記の申請、供託の申請、住民票、戸籍謄抄本、印鑑登録証明書、登記事項証明書の請求、税金の申告・納付・還付等行政機関に対する申請、請求、申告、支払い等
  9. 医療契約、入院契約、介護契約(介護保険制度における介護サービスの利用契約、ヘルパー・家事援助者の派遣契約等を含む)、施設入居契約その他の福祉サービス利用契約等、甲の身上監護に関する契約の締結、変更、解除、費用の支払い等
  10. 要介護認定の申請及び認定に関する承認又は異議申立てに関する事項
  11. 以上の各事項に関する紛争についての訴訟代理人の選任及び解任
  12. 以上の各事項に関連する一切の事項
想定できる法律行為を全て記入しておきます。これがなければ法律行為の都度、例えば、銀行でお金を出金する場合は出金する度に委任契約を結ばなければ代理人がお金を出金するという法律行為を代理できなくなってしまいます。
また銀行での法律行為でいえば、銀行によりますが委任契約を公正証書にしておくことで、初回に委任状を持参すれば登録してくれます。そのため2度目以降は代理人の身分証のみで委任状が不要になるというメリットもあります。

まとめ

この財産管理等委任契約は法律行為の度に委任状や報酬の確認をする必要のない、オールマイティな委任契約と考えることができます。
公正証書による作成が重要であることはご理解いただけたのではないでしょうか。
ご本人が元気なうちは、公正証書による作成が義務である任意後見契約とセットで財産管理等委任契約を締結することが多いため、その意味でも公正証書による作成が基本といえます。
また財産管理等委任契約と任意後見契約は別々の契約ですが、同時に同一の書面で締結することも可能です。

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