機械学習で進化する行政書士Gyobot Blog
財産管理等委任契約は、自己の財産を管理するための代理権を他人に与えるための契約です。
任意後見契約とは反対に、代理権を委託する本人(委任者)の判断能力が低下していない場合でも契約を発効させることができます。
そのため代理権を委託する本人(委任者)に判断能力がある間は財産管理等委任契約で代理権を付与しておいて、判断能力が落ちた場合に自動的に任意後見契約にスライドさせる移行型の任意後見契約を締結するために任意後見契約と同時に財産管理等委任契約を締結することがあります。
また精神上の障がいではなく身体上の障がいがある場合に財産管理等委任契約を利用することもできます。
もちろん代理権を付与したからといって本人(委任者)の法律行為が制限されることもありません。
この契約の注意点は、家庭裁判所などの公的機関が代理権を委託された者(受任者)を監督するなどの義務がない点です。
また任意後見契約書と違って必ずしも公正証書として作成する必要がないため、当事者同士で契約書を交わすのみの契約を締結することも可能です。
しかし公正証書として締結しておけば、受任者が本人(委任者)の代理で銀行でお金のやり取りをする場合にも毎回委任状を見せなければならないなどの手間をなくす(※銀行によっては毎回委任状が必要な場合あり)ことが可能になりますし、何より監督人が受任者の監督をするようにしておくことが、事務処理における万が一の不正が起きるリスクを低減することに寄与します。
そのため監督人を選任して代理権を委託する本人(委任者)と代理権を委託される者(受任者)とこの契約を監督する役目を担う監督人の三者で公正証書として契約することが望ましいです。
公証役場へ行くと財産管理等委任契約書のひな形をもらうことができます。今回はこのひな形をベースに契約書の内容を解説します。
親族に後見を依頼する場合で、無報酬、自動的に任意後見契約へシフトする移行型の契約を想定しています。
実際に契約書を作成する場合はひな形の丸写しではなく、必ず行政書士などの専門家に契約内容と契約書の相談をするようにしてください。
平成○○年第○○○号
本公証人は、平成○○年○○月○○日、委任者○○(以下「甲」という。)及び受任者○○(以下「乙」という。)の嘱託により、次の法律行為に関する陳述の趣旨を録取してこの証書を作成する。
(契約の趣旨)
甲は乙に対し、平成○○年○○月○○日、甲の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務(以下「委任事務」という。)を委任し、乙は、これを受任する。
(任意後見契約との関係)
(管理対象財産)
乙が本件委任事務により管理する財産は、動産、不動産を含む甲の所有する全ての財産とする。但し、財産管理着手時において、これと異なる変動があったときは、財産管理着手時における全ての財産の管理を含む。
(委任事務及び代理権付与の範囲)
甲は、乙に対し、別紙代理権目録記載の委任事務を委任し、その事務処理のための代理権を付与する。また、甲が医療行為を受けることの同意の権限を乙に付与する。
(証書等の引渡し)
(報告義務)
(費用の負担)
乙が本件委任事務を処理するために必要な費用は、甲の負担とし、乙は、その管理する甲の財産からこれを支出することができる。
(報酬)
乙の報酬は無報酬とする。
(契約の変更)
本契約に定める代理権の範囲を変更する契約は、公正証書によってするものとする。
(契約の解除)
甲及び乙は、いつでも公証人の認証を受けた書面により本契約を解除することができる。
(契約の終了)
本契約は、第2条第2項の場合の他、次の場合に終了する。
(終了時の財産引継ぎ)
乙は、本件契約が終了した場合、本件委任事務にかかる管理財産、帳簿類及び証書類を甲または甲の法定代理人または遺言執行者に引き渡すものとする。
(守秘義務)
乙は、本件契約に関して知り得た甲の秘密を正当な理由なくして第三者に漏らしてはならない。
本旨外要件
(本籍)東京都○○区○○町○丁目○番地
(住所)東京都○○区○○町○丁目○番○号
無職
委任者甲 ○○ ○○
大正○年○月○日
甲は、印鑑登録証明書の提出により人違いでないことを証明させた。
(住所)東京都○○区○○町○丁目○番○号
会社員
受任者乙 ○○ ○○ 印
昭和○年○月○日
乙は、印鑑登録証明書の提出により人違いでないことを証明させた。
前記のとおり、委任者甲、受任者乙に読み聞かせ、かつ閲覧させたところ、各自この筆記の正確なことを承認し、署名押印する。
委任者甲 ○○ ○○
受任者乙 ○○ ○○
この証書は、平成○○年○○月○日、本公証人役場において、法律の規定に従って作成し、本公証人次に署名押印する。
東京都○○区○○町○丁目○番○号 東京法務局所属 公証人 ○○ ○○
この財産管理等委任契約は法律行為の度に委任状や報酬の確認をする必要のない、オールマイティな委任契約と考えることができます。
公正証書による作成が重要であることはご理解いただけたのではないでしょうか。
ご本人が元気なうちは、公正証書による作成が義務である任意後見契約とセットで財産管理等委任契約を締結することが多いため、その意味でも公正証書による作成が基本といえます。
また財産管理等委任契約と任意後見契約は別々の契約ですが、同時に同一の書面で締結することも可能です。
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